ビーターシートとは
ビーターシートとは、製紙工業で使われるビーター(叩解機)で繊維を解砕してスラリー化し、合成ゴムラテックスや充填材を添加してウェットマシン(抄造機)で均一なシート状に抄き上げたガスケット材料です。圧延法で作るジョイントシートに対し、抄造法でつくる点が決定的な違いです。
ビーターシートの基本構成

セキネシール工業の代表品AF70(一般耐油タイプ)とAF74(油膨潤タイプ)は、いずれも特殊耐熱繊維と補強材+合成ゴムからなる抄造シートで、エンジン回りの低~中面圧シールに最適化されています。
ビーターシートの3つの大きな特徴

① 高い圧縮率と相手面なじみ性
抄造構造ゆえに繊維間に微細な空隙を持ち、締付時に潰れて相手面の凹凸を埋めます。AF70の代表値で圧縮率14%・復元率64%前後と、低面圧でも確実なシールを成立させやすい構造です。
② 低い応力緩和率による長期信頼性
熱と荷重を受け続ける環境でも、応力緩和(へたり)が抑えられるよう繊維配合と加硫を最適化。長期締結後も面圧維持ができ、増し締めなしでもシールが続きます。
③ 鋳肌や荒れた面にも追従
鋳造ケースの鋳巣(巣穴)や面荒れを吸収する追従性が高く、機械加工コストを抑えながらシール性を確保できます。
ビーターシートの「良さ」をもう一段深掘り

ビーターシートの本当の価値は、単に「柔らかくてなじむ」だけではありません。水に分散した原料を抄造する“水系プロセス”と、配合から物性を作り込める設計自由度にあります。当社の会社案内でも要点として挙げている、ビーターシートならではの良さを整理します。
① 水系プロセスで環境にやさしく、現場も安全
ビーターシートは原料を水に分散させて抄き上げる水系プロセスで製造します。表面処理工程でも脱溶剤化(水系化)を進めており、有機溶剤を使わないことで環境負荷を下げ、作業者の安全性向上にも寄与します。SDGsやサプライチェーンの化学物質管理の観点でも選ばれやすい材料です。
② 配合で機能を“設計”できる

骨格となる繊維(アラミド・パルプ・無機繊維)、特性を整える粉体(炭酸カルシウム・カオリン・グラファイト)、結合と耐油性を担うバインダー(NBR/SBR系ゴム・樹脂)。この3要素の組み合わせを、お客様が求める機能・特性に合わせて設計できます。カタログ品から選ぶのではなく「配合から作る」——これが抄造メーカーならではの強みです。
③ かさ比重で物性をチューニング
同じ繊維系でも、かさ比重を上げれば応力緩和率が低く高強度に、下げれば圧縮率が高く、低面圧でも相手面によくなじむ方向に振れます。部位の面圧やフランジ平面度に合わせて、物性を作り分けられるのがビーターシートの懐の深さです。
④ ラテックス選択で油への強さを最適化
バインダーの種類で油への振る舞いも変えられます。油膨潤タイプは油中でシートが適度に膨潤し、締付力の低下やフランジ変形による面圧低下を防止。耐油タイプは使用中の強度低下が少なく耐久性に優れます。当社のAF74(油膨潤)/AF70(耐油一般)がその代表です。
⑤ 薄物から厚物まで、さらに複合化
0.075mmの薄物から数mmの厚物まで抄造でき、ロール加工で高密度化したり、鋼板など異種材料と一体化する複合化も可能です。鋼板+ビーターシートの「シスコメタル」、フック付き鋼板+ビーターシートの「スチールベスト」へと展開し、ビーターシート並みのなじみ性を保ちながら高強度・高耐熱を実現します。
⑥ 水系だからこそ「リサイクル」できる
水系原料ゆえ、打抜き後の端材や抄造排水中の原料(スラッジ)を回収・粉砕して再原料化できます。リサイクルビーターシート、リサイクル率の高いスーパーリサイクルビーターシート(SR)をラインナップし、産廃削減とコストダウンを両立します。
ビーターシートが活躍する用途
- エンジン:オイルパン、タイミングカバー、ヘッドカバー、ウォーターポンプ
- トランスミッション・デフ:ハウジング合わせ面
- 油圧機器:ポンプ、バルブブロック
- 建設・農業機械:ミッションケース、減速機
特に「比較的低~中温・潤滑油や燃料・冷却水のシール」「鋳物ケースの合わせ面」「鋳肌のなじみ性が必要な箇所」で第一選択肢になります。
ジョイントシートとどう違う?
ビーターシートとジョイントシートは製法が根本的に異なり、物性や向き不向きも変わります。大まかには「相手面の鋳肌に追従して低面圧でシールしたい」ならビーターシート、「圧延の硬さで面圧を管理したい」ならジョイントシートです。製法・物性・用途の詳しい比較は「ビーターシートとジョイントシートの違いは?」で解説しています →
ビーターシート選定のチェックポイント
- 使用温度:AF70・AF74はおよそ-40~200℃で使用される
- 流体:潤滑油・燃料油・冷却水・LLC・空気
- 面圧:低~中面圧領域(必要圧縮率の確保)
- 厚さ:0.5/0.8/1.0/1.2/1.5/2.0mmなど
- 加工方法:トムソン抜き、プロッター、レーザー、ウォータージェット
セキネシール工業のビーターシート
セキネシール工業は1971年に山崎工場でビーターシートの量産体制を確立して以来、半世紀以上にわたって自動車メーカー・農機メーカー・建機メーカーに供給を続けてきました。1985年にいち早くノンアスベスト化を進め、1996年には抜き打ち端材を回収して再原料化するリサイクル型ビーターシートを世界に先駆けて投入。耐油・耐溶剤・低面圧シール性を維持しながら、産廃削減とコストダウンを両立しています。
抄造機の特性を活かし、0.075~3.9mmという広い厚みレンジで、お客様の要求物性に合わせた配合・厚みカスタムが可能です。
📩 お問い合わせ
「ビーターシートを使いたいが、配合のチューニングを相談したい」「既存の他社品からの切替評価をしたい」「試作1ロットだけ製作してほしい」など、お気軽にお声がけください。試作・評価サンプルの提供から量産まで、一貫してお手伝いします。